『ごんぎつね』ごんはなぜ、いたずらをしたのか──「悪い子」で終わらせない読み方
▶ YouTubeで見るごんぎつね|ごんぎつねって悪いきつね?【考察】「ごんって、いたずらっ子だったんだよね」
そう覚えている方が多いかもしれません。けれど本文を読み返すと、ごんのしたことは「いたずら」という言葉から想像するより、ずっと重いことに気づきます。
この記事では、ごんがなぜそんなことをしたのかを追いながら、「ごんは悪い子か、いい子か」で止まらない読み方を探してみます。

ごんのしたことを、並べてみる
本文に書かれているのは、こういうことです。
- 畑へ入っていもを掘りちらす
- 菜種がらの干してあるところへ火をつける
- 百姓家の裏に干してあるとんがらしをむしり取る
- 兵十のとったうなぎを盗む
いかがでしょうか。
火をつける、というのは、木と紙でできた家が並ぶ村では命にかかわることです。食べものを奪うのも、毎日を暮らすのがやっとの人たちにとっては、深刻な打撃でした。
村人にとってのごんは、「かわいいいたずらっ子」ではありません。 本当に困る相手だったのです。
ここを押さえておくと、あとの場面の重みが変わってきます。
それでも、ごんは悪いきつねなのか
では、ごんは悪意をもってやっていたのでしょうか。
そうは読めません。ごんには、自分のしていることの意味が分かっていなかったからです。
火をつければ村が焼けるかもしれない。食べものを奪えば誰かが飢えるかもしれない。ごんは、そこまで想像していません。
では、なぜやったのか
ここで、ごんが置かれた状況を思い出してください。
ひとりぼっちの小ぎつねで、しだのいっぱいしげった森の中に、あなをほってすんでいました。
ひとりぼっち、と書かれています。

きつねは、秋になると子どもが親から離れて、一匹で生きていきます。ごんもそうやって、たったひとりで森に暮らしていました。
さみしくて、人の世界に近づきたい。誰かとかかわりたい。けれど、どうすればいいのか分からない。
だから、いたずらという形でしか関われなかった——そう読むと、ごんの行動がつながって見えてきます。
ごんにとっては「かまってほしい」の合図。村人にとっては「迷惑」で「おそろしいこと」。 同じ行為が、両側でまったく違う意味を持っていました。
うなぎの日に、何が変わったか
物語が動くのは、兵十の母親が亡くなった場面です。
ごんは考えます。「兵十のおっかあは、うなぎが食べたいと言いながら死んだんじゃないだろうか」。そして、自分が盗んだうなぎのせいだと思い至ります。
このとき初めて、ごんは自分の行いをふり返ります。
ここが大事なところです。ごんは誰かに叱られたわけでも、罰を受けたわけでもありません。自分で気づいたのです。
そして翌日から、栗や松たけを届け始めます。物語では、これを「つぐない」と呼んでいます。
栗は、簡単に手に入るものではない
ごんは、山で栗をどっさりひろって、それをかかえて、兵十の家へ行きました。
さらりと書かれていますが、山まで行かなければ手に入らないものです。それを毎日、こっそり置いていく。
見返りを求めていません。名乗ってもいません。ただ、届け続けます。
ごんは「心が育っていく」きつね
ここまで見てくると、ごんは二つの型のどちらにも収まらないことが分かります。
| よくある読み方 | 本文から見ると |
|---|---|
| ごんは悪いきつね | ✕ 悪意がない。意味を知らなかった |
| ごんはかわいそうなきつね | △ 同情だけでは、つぐないの重みが消える |
| ごんは心が育っていくきつね | ⭕️ 自分の行いを通して、人の気持ちを知っていく |
新美南吉が描いたのは、その途中にいるごんです。
まだ完成していない。相手のことも本当には分かっていない。それでも、確かに何かを学びつつある。だからごんは、こんなに人間くさいのだと思います。
子どもと話すときの問いかけ
読んだあとに、こんなふうに聞いてみてください。正解は用意しなくて大丈夫です。
| 問いかけ | ねらい |
|---|---|
| 「ごんのいたずらって、どのくらい悪いことだと思う?」 | 「いたずら」の重さに気づく |
| 「もし村の人だったら、ごんをどう思ったかな」 | 視点を移してみる |
| 「ごんはどうして、ひとりでいたずらばかりしてたんだろう」 | さみしさに目を向ける |
| 「栗をこっそり置いていったのは、なんでだと思う?」 | 名乗らない理由を考える |
| 「ごんは、悪い子?いい子?」 | どちらとも言えないと気づく |
最後の問いは、「どちらとも言えない」という答えにたどりつけたら大成功です。すぐに決められないことがある、と知るのは、物語を読む大きな意味のひとつだと思います。
聞くときのコツ
子どもが「悪い子」と答えても、「いい子」と答えても、すぐに評価しないでください。
かわりに 「どうしてそう思ったの?」 と返してみてください。理由を話しているうちに、自分で「でも……」と言い出すことがあります。その「でも」が生まれる瞬間が、いちばん豊かな時間です。
おわりに
ごんのいたずらは、軽いものではありませんでした。それでもごんは、自分で気づき、自分で行動を変えていきます。
叱られたからではなく、自分で気づいた。 ここに、この物語のやさしさがあるように思います。
お子さんがごんをどう見るか、ぜひ聞いてみてください。大人が思いつかない答えが返ってくるかもしれません。
この記事は、YouTube「おわか文庫」の考察動画をもとに書いています。ミアとハルンの会話で聞きたい方は、動画のほうもどうぞ。
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