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『白いぼうし』色にかくされた意味──青・白・黄色でできた物語

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『白しろいぼうし』を読よみ返かえすと、あることに気きづきます。

この物語ものがたりには、色いろがとても丁寧ていねいに書かき込こまれています。

空そらの色いろをしたタクシー。白しろい帽子ぼうし。黄き色いろい夏なつみかん。どれも、ただの飾かざりではないように思おもえます。


そもそも、シリーズ名めいが『車くるまのいろは空そらのいろ』

まず、大事だいじな事実じじつがあります。

『白しろいぼうし』は単独たんどくの作品さくひんではなく、『車くるまのいろは空そらのいろ』というシリーズの一いち篇へんです。1968年ねんに出版しゅっぱんされた、あまんきみこさんの最初さいしょの本ほんでもあります。

シリーズの題名だいめいそのものが、「車くるまの色いろは空そらの色いろ」なのです。

作者さくしゃにとって、松井まついさんのタクシーが空そらの色いろであることは、シリーズ全体ぜんたいを貫つらぬく設定せっていでした。ここまで大切たいせつにされている以上いじょう、色いろにも意味いみがあると読よんでよさそうです。

この記事きじの作者さくしゃに関かんする事実じじつは、Wikipedia「あまんきみこ」を参照さんしょうしています。


青あお——だれのものでもない色いろ

空そらの色いろとは、どんな色いろでしょうか。

広ひろくて、やわらかくて、だれのものでもない色いろです。手てでつかむことも、持もち帰かえることもできません。

この物語ものがたりに出でてくる女おんなの子こもまた、つかまえられない存在そんざいでした。名前なまえも告つげず、行ゆき先さきもはっきりさせず、いつのまにか消きえてしまいます。

つかまえられない女おんなの子こが、つかまえられない色いろの車くるまに乗のる。 そう考かんがえると、この組くみ合あわせはとても自然しぜんです。


白しろ——まだ決きまっていない色いろ

次つぎに、題名だいめいにもなっている「白しろ」です。

白しろは、何なに色いろにもなれる色いろです。まだ何なにも混まざっていない、決きまっていない色いろとも言いえます。

そして、この物語ものがたりの中心ちゅうしんにある「女おんなの子この正体しょうたい」も、最後さいごまで決きめられていません。作者さくしゃは、はっきり書かかないという選えらび方かたをしました。

さらに言いえば、白しろい帽子ぼうしは、開あけるまで中身なかみが分わからないものでもあります。チョウなのか、夏なつみかんなのか。開あけてみるまで決きまらない。

白しろは、答こたえを決きめない色いろ。 そう読よむと、この題名だいめいが物語ものがたりそのものを表あらわしていることが見みえてきます。


黄き色いろ——あたたかさの色いろ

そして、夏なつみかんの黄き色いろ。

初夏しょかの光ひかりの色いろであり、あたたかさの色いろです。明あかるくて、はっきりしていて、見みるとほっとする色いろでもあります。

青あおと白しろが「決きめつけないこと」「つかまえないこと」を表あらわしているとすれば、黄き色いろは、そこに残のこるぬくもりを担になっています。


三みっつの色いろが組くみ立たてているもの

まとめると、こうなります。

色いろ もの 表あらわしているもの
青あお 空そらの色いろのタクシー 広ひろがり。つかまえないこと
白しろ 白しろい帽子ぼうし 決きめつけないこと
黄き色いろ 夏なつみかん あたたかさ

この物語ものがたりは、色いろでできています。 読よみ終おえたあとに明あかるい気持きもちが残のこるのは、この配はい色いろのためかもしれません。


あまんきみこさんという人ひと

では、なぜあまんきみこさんは、こうした静しずかな書かき方かたを選えらんだのでしょうか。作者さくしゃの歩あゆみを見みると、感かんじられることがあります。

あまんきみこさんは、1931年ねん、旧きゅう満まん洲しゅうの撫順じゅんで生うまれました。父親ちちおやは南みなみ満まん洲しゅう鉄道てつどうの系列けいれつ会社かいしゃに勤つとめていました。

子こどものころは体からだが弱よわく、病床びょうしょうで過すごすことが多おおかったといいます。そのとき家族かぞくから民話みんわや寓話ぐうわを聞きかせてもらったことがきっかけで、「窓まどから空そらを眺ながめながら、空想くうそうでお話はなしを作つくることが好すきでした」 と振ふり返かえっています。

空そらを眺ながめながら物語ものがたりを作つくっていた子こどもが、のちに『車くるまのいろは空そらのいろ』を書かくことになります。

戦争せんそうと、その後ご

女学校じょがっこう2年生ねんせいのとき、大連たいれんで終戦しゅうせんを迎むかえます。父親ちちおやは出征しゅっせい中ちゅう、祖父そふはすでに亡なくなっており、残のこされた家族かぞくは女性じょせいばかりでした。ソ連れん軍ぐんの占領せんりょう下かとなった大連たいれんで、一家いっかは2年ねん近ちかくを過すごします。

身みの安全あんぜんのために家族かぞくは頭髪とうはつを刈かり上あげ、あまんさん自身じしんは男子だんしの制服せいふくを借かりて着きていたと伝つたえられています。

1947年ねんに大阪おおさかへ引ひき揚あげ、その後ご、母親ははおやが乳にゅうがんを患わずらいます。母ははは娘むすめの将来しょうらいを案あんじ、あまんさんは19歳さいで婚約こんやくしました。母ははが亡なくなったのは、その翌日よくじつでした。

小ちいさな出来事できごとを、ていねいに見みつめる

こうした歩あゆみをたどると、あまんきみこさんの作品さくひんの静しずけさが、少すこし違ちがって見みえてきます。

大おおきな事件じけんを大おおきく書かくのではなく、小ちいさな出来事できごとをていねいに見みつめる。 説明せつめいしすぎず、答こたえを決きめず、それでも読よんだあとにあたたかさが残のこる書かき方かた。

松井まついさんもまた、大おおげさな人助ひとだすけはしません。ただ静しずかに、少すこしだけ工夫くふうします。

人ひとを支ささえるのは、強つよい言葉ことばではなく、小ちいさなやさしさかもしれない。 そうした感覚かんかくが、作品さくひんの底そこに流ながれているように思おもえます。

もちろん、これは一ひとつの読よみ方かたにすぎません。けれど作者さくしゃを知しってから読よみ返かえすと、あの空そらの色いろや、帽子ぼうしの中なかの夏なつみかんが、少すこし違ちがう手てざわりで届とどいてくるはずです。


考かんがえてみたい問とい

問とい ねらい
このお話はなしに出でてくる色いろを、いくつ見みつけられるかな 本文ほんぶんを読よみ返かえす楽たのしさ
どうして松井まついさんの車くるまは、空そらの色いろなんだろう 設定せっていの意味いみを考かんがえる
「白しろい」ぼうしなのは、なぜだと思おもう? 題名だいめいの意味いみに気きづく
色いろを変かえたら、お話はなしの感かんじはどう変かわるだろう 表現ひょうげんの効果こうかを考かんがえる

作品さくひん情報じょうほう

項目こうもく 内容ないよう
作品さくひん名めい 白しろいぼうし(『車くるまのいろは空そらのいろ』所収しょしゅう)
作者さくしゃ あまんきみこ
初刊しょかん 1968年ねん

この記事きじは、YouTube「おわか文庫ぶんこ」の考察こうさつ動画どうがをもとに書かいています。あわせて「女おんなの子この正体しょうたいはチョウ?」、「どうして夏なつみかんだったのか」もどうぞ。

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