『注文の多い料理店』なぜ山猫なのか──人間のようで、けものでもある存在
▶ YouTubeで見る注文の多い料理店|山猫が狼よりも怖い理由『注文の多い料理店』に出てくるのは、熊でも狼でもなく、山猫です。
山猫は、人間を襲いかかって捕まえるのではありません。西洋料理店を作り、扉に言葉を書き、二人の紳士を少しずつ奥へ進ませます。そこに、山猫ならではの不思議なこわさがあります。
山猫軒は、まず料理店として現れる

山猫軒は、山の中にある立派な西洋料理店です。看板があり、扉があり、店の作法のような注文が書かれています。
二人の紳士は、だからこそ安心して店に入ります。けものの巣に入ったとは思いません。
山猫軒のこわさは、最初から恐ろしい姿を見せないところにあります。人間が安心しそうな形を借りて、近づいてくるのです。
力ではなく、言葉で動かす

扉には「髪を整えてください」「鉄砲を置いてください」などと書かれています。
山猫は、力づくで二人を捕まえません。二人が自分から言葉に従うように、丁寧な注文を重ねていきます。
人間の言葉を使い、人間の店のような形を使って、人間を料理しようとするところに、山猫の気味悪さがあります。
鍵穴からのぞく青い目玉

物語の終わりに近づくと、鍵穴から青い目玉がのぞきます。声も「にゃあお」「ごろごろ」と、猫らしい音になります。
それまで店の主人のようにふるまっていた存在が、急に山のけものへ戻るように見えます。
人間のようだったものが、やはり人間ではない。このずれが、山猫軒をただの料理店ではない場所にしています。
人間のまねをする、山のけもの

山猫は、店を作り、看板を出し、文字を書き、料理の準備をしています。まるで人間のまねをしているようです。
けれど、山猫が作る料理は人間です。山のけものが、人間のやり方を使って人間を食べようとしています。
山猫は人間に近いようで、決して人間ではありません。その境目にいるような姿が、この物語の不思議な世界をつくっています。
二人の紳士と似ているところ

二人の紳士は、動物を撃って楽しもうとしていました。山猫は、人間を料理して食べようとしています。
どちらも食べる側に立ち、相手の命を自分の楽しみや食事のために扱っています。
山猫がこわいのは、けものだからだけではないのかもしれません。二人の紳士、そして人間の中にもあるこわさを映しているように見えるからです。
考えてみたい問い
| 問い | 考える手がかり |
|---|---|
| なぜ山猫は、料理店の形を選んだのだろう? | 二人が店を安心だと思った理由を考える |
| 山猫が人間のように見えるところは、どこだろう? | 看板、扉、言葉、料理の準備を探す |
| 山猫と二人の紳士は、どのようなところが似ている? | それぞれが何を食べようとしたかを比べる |
← 読み深め