2026年 小学校高学年の課題図書4冊──どれが読書感想文を書きやすい?
2026年、小学校高学年の課題図書はこの4冊です。
- 『ポジション!』(高田由紀子)
- 『リヒト!』(イノウエミホコ)
- 『ミシュカ』
- 『キミの一歩 アフリカ ゾウを食べるにはひと口ずつ』(味田村太郎)
どれも魅力のある本ですが、「読みやすい本」と「感想文を書きやすい本」は、少し違います。
特に高学年では、「おもしろかった」「かわいそうだった」で終わらず、
- なぜ、そう思ったのか
- 人物に対する見方が、どのように変わったのか
- 作品の出来事が、自分の生活や社会とどうつながるのか
そこまで考えられる本を選ぶと、その子らしい感想文になります。
1. 『ポジション!』
主人公のメブキは運動が苦手です。それなのに、背が高いという理由で、人数の足りないミニバスケットボールのチームに誘われます。
「何かが変わるかもしれない」と期待して入団したメブキ。ところが思うようにプレーできず、自分は仲間の役に立てていないのではないかと自信を失っていきます。
そんなメブキが、車いすバスケットボールに取り組むルイの姿に励まされ、仲間とぶつかりながら、自分の役割や居場所を探していく物語です。
メブキだけでなく、チームの仲間たちもそれぞれの「ポジション」を探す構成になっています。
感想文の中心になる問い
得意ではなくても、そこにいてよいのだろうか 仲間の役に立つとは、どういうことなのだろう
題名の「ポジション」は、バスケットボールの位置だけではありません。チームの中での役割。友達との関係。そして「自分はここにいてもいい」と思える場所。
どんな子に向いているか
スポーツ経験がなくても大丈夫です。
- グループの中に自分の居場所がないと感じたこと
- 得意ではないことに挑戦したこと
- 友達の役に立ちたいのに、うまくできなかったこと
- 委員会や係で、自分の役割に迷ったこと
こうした経験とつなげられます。
⚠️ こう書くと、もったいない
「努力すれば成功すると思いました」
メブキは何をきっかけに変わったのか。初めのメブキと後半のメブキでは、「仲間の役に立つ」という言葉の意味がどう変わったのか。そこを比べると、高学年らしい感想文になります。
4冊で迷ったら、まずこの本をおすすめします。 身近な経験と結びつけやすく、考えられるテーマも一つではないからです。
2. 『リヒト!』
主人公の理人は、祖母のセツさんから、中身の分からない封筒を託されます。
セツさんが最後に伝えたかったことは何なのか。そもそも自分は、セツさんのことをどれほど知っていたのか。
疑問を抱いた理人は、自分が苦手に感じている人物とともにドイツへ向かいます。異国での旅と人との関わりを通して、理人の見方が変化していく物語です。
感想文の中心になる問い
人のことを知るとは、どういうことなのか
毎日一緒にいる家族でも、その人が昔どんなことを考え、どんな経験をしてきたのかを、私たちはすべて知っているわけではありません。
また、一度「苦手だ」と思った相手を、その印象だけで決めつけてしまうこともあります。
- 「自分は、家族の知らない一面について考えたことがあるか」
- 「苦手だと思っていた人の見方が変わったことはあるか」
- 「言葉にできなかった思いは、どうすれば伝わるのか」
どんな子に向いているか
家族の物語が好きな子。人間関係について考えるのが好きな子。旅や外国の文化に興味がある子。少し謎のある物語を、先を考えながら読むのが好きな子です。
⚠️ こう書くと、もったいない
「ドイツへ行って楽しかった」「封筒の中身が分かってよかった」
出来事の説明で終わってしまいます。旅の前と後で、理人の人の見方がどう変わったのか。 そして、自分にも人を一つの印象だけで見ていた経験はないか。そこを中心にすると、深い文章になります。
3. 『ミシュカ』
主人公のロヤは、9歳の女の子。アフガニスタンで生まれ、家族とともに国を追われ、長い旅を経験しました。
ようやく新しい国で暮らし始めたロヤの家族に、一匹のウサギが加わります。そのウサギの名前がミシュカです。
ロヤはミシュカに、自分のことや家族のこと、これまでの旅について語りかけます。穏やかな家族の暮らしと、その心の奥に残る悲しみが、静かに描かれた物語です。
ウサギと子どもの物語として読みやすい一方で、難民になること。故郷を離れること。安心して暮らせる場所を持つこと。 とても大きなテーマを扱っています。
感想文の中心になる問い
安心して帰れる場所とは、どんな場所だろう 人の話を聞くことには、どんな力があるのだろう
⚠️ ここが一番大事です
「難民の人はかわいそうだと思いました」
これだけで終わらせないことです。
もちろん、悲しい・つらいと感じることは大切な心の動きです。でもそこからもう一歩、
- 「ロヤが本当に望んでいたものは何だったのだろう」
- 「自分の家があるということは、どんな意味をもつのだろう」
- 「つらい経験を話せる相手がいることは、なぜ大切なのだろう」
ロヤは、ただ助けられるだけの存在ではありません。 自分の言葉を持ち、家族を思い、ミシュカを愛する一人の子どもです。
だからこそ、自分と違うところだけでなく、自分と同じところを探すことが大切です。
どんな子に向いているか
動物が登場する物語が好きな子。家族や居場所について考えたい子。世界で起きていることに関心がある子。登場人物の気持ちをゆっくり考えながら読む子です。
4冊の中では、心を強く動かされやすい作品です。その大きな感情を「かわいそうだった」で止めず、自分の生活の中にある安心や家族との時間を見つめ直すところまで広げたい一冊です。
4. 『キミの一歩 アフリカ ゾウを食べるにはひと口ずつ』
……題名だけで少し考えてしまいますね。ゾウを、ひと口ずつ。もちろん、本当に食べるお話ではありません。
これは物語ではなく、著者がアフリカ各地で出会った人や出来事を、自身の経験をもとに伝えるエッセイです。
砂漠化による食料不足や貧困、環境破壊や野生動物の保護。さまざまな問題を背景にしながら、折り紙、チェス、環境活動などに取り組む子どもたちの姿を紹介しています。
感想文の中心になる問い
大きな問題に対して、子どもにできることはあるのだろうか
題名の「ゾウを食べるには、ひと口ずつ」という言葉のように、大きすぎる問題でも、最初の一歩を重ねることで変えられるかもしれない。
書き方のコツ:全部について書かない
紹介される国や人、問題が多いので、一つに絞ります。
一番心に残った国。一番気になった子ども。一番驚いた取り組み。そのどれか一つを選んで、
- 「日本の自分の生活と、何が違うのか」
- 「反対に、どんなところは同じなのか」
- 「その子が最初の一歩を踏み出せたのは、なぜなのか」
- 「自分にできる一歩には、何があるのか」
⚠️ 気をつけたいこと
「アフリカは貧しくて大変な場所だと思いました」
アフリカ全体を一つにまとめないことです。
アフリカには多くの国があり、暮らしも文化も、抱えている問題も違います。この本で紹介された、どの国の、どの子どもの、どの行動に心が動いたのか。 そこを具体的に書くことが大切です。
どんな子に向いているか
社会科や外国の文化が好きな子。写真や事実から考えるのが得意な子。世界の問題と自分の生活を結びつけてみたい子です。
では、どれが書きやすい?
| こんな子には | この本 |
|---|---|
| 迷ったら/自分の経験とつなげたい | ポジション! |
| 人の気持ちや家族の関係をじっくり読みたい | リヒト! |
| 心に残る物語から、家族や居場所を考えたい | ミシュカ |
| 社会科や外国の暮らしに興味がある | キミの一歩 アフリカ |
本選びで大切なのは、一番有名な本でも、一番立派に見える本でも、一番むずかしそうな本でもありません。
読んだ子どもが「この気持ち、少し分かる」「どうしてだろう」「自分とは違うけれど、もっと知りたい」と思える本を選ぶことです。
読み終わったあとに聞く、3つの質問
高学年では、この3つが効きます。
| 質問 | 引き出せるもの |
|---|---|
| 「読む前と後で、だれに対する見方が変わった?」 | 考えの変化 |
| 「登場人物と、自分はどこが同じで、どこが違う?」 | 自分とのつながり |
| 「この本が投げかけている問題は、自分の生活とどうつながっている?」 | 社会との接続 |
この3つを考えると、あらすじの説明ではなく、その子自身の考えが見つかりやすくなります。
すぐに答えが出なくても大丈夫です。
むしろ「まだ分からない」「どちらが正しいのか迷う」という気持ちも、高学年の読書感想文では大切な材料になります。
← 文庫だより