音読の宿題の効果とは?──毎日の数分で、子どもの何が変わるのか
▶ YouTubeで見る音読の宿題の効果とは?|小学生の親が知っておきたいことおわか文庫の研究室に、こんな相談が届きました。
「音読には意味がないと聞きました。宿題も大変なので、やらせなくていいですか」
毎日のことですから、聞くほうも疲れてきますよね。夕ごはんのしたくをしながら、同じ文章を何度も聞く。音読カードにサインをする。それが、ほんとうに子どもの力になっているのか、分からなくなることもあると思います。
けれど、音読にはさまざまな効果があることが、研究で報告されています。
毎日のほんの数分を積み重ねると、子どもの何が変わるのか。いっしょに見ていきましょう。
第一章 音読は、読む練習だけではない

音読というと、上手に読むための練習だと思われがちです。もちろん、それも大切です。
でも、音読の役目はそれだけではありません。声に出して読み、その声を自分の耳で聞くことで、自分がきちんと読めているか、分かっているかを確かめることができます。
文部科学省が出している先生向けの手引き(学習指導要領の解説)にも、音読には「自分が理解しているかどうかを確かめる働き」があると書かれています。
だとすると、音読でつっかえることにも意味があります。 それは、ただうまく読めなかったということではありません。
- 言葉のまとまりを、つかめていなかった
- 文字を、正しく読めていなかった
- 文章の意味を、理解できていなかった
こうしたつまずきが、黙って読んでいると外からは見えません。音読では、読み間違いや、つっかえたところが声になって表に出てきます。 だからこそ、つまずいているところに気づきやすいのです。
第二章 声に出すことで、意味をつかみやすくなる

大人は、黙って文章を読んでも意味をつかむことができます。文字を見ただけで、すぐに言葉や意味をつかむ力があるからです。
けれど子どもは、その力がまだ育っている途中です。
とくに一年生・二年生くらいの子は、自分で文字を読んで理解する力よりも、耳で聞いて理解する力のほうが高い時期です。髙橋麻衣子さんの研究でも、こうした傾向が報告されています。
つまり、声に出して読むと、その声を自分の耳で聞くことができる。子どもにとっては、それが意味をつかむ近道になっているのです。
音読は、上手に読むための練習であると同時に、文章の意味をつかむための方法でもあります。
第三章 聞いてもらえると、効果が変わる

ところが、音読をていねいに聞いてもらえる機会は、あまりありません。
学校では、一人ずつの音読を毎日じっくり聞く時間を取ることは、なかなかできません。そして家庭でも、音読は子ども一人に任されやすくなります。井上善弘さんの研究でも、家庭学習としての音読が子どもに任せきりにされているという課題が指摘されています。
では、そばで聞くことには、どれくらい意味があるのでしょうか。
太田絵梨子さんは、宿題についての研究をまとめています。宿題をただ出すだけの場合と、先生が評価やコメントを返していた場合をくらべると、返していた場合のほうが大きな効果が見られました。宿題は、出しっぱなしにせず、反応を返すことが大切だと考えられます。
音読についての研究でも、とくに低学年では、先生や保護者が聞き手となって読みに反応を返すことの大切さが指摘されています。
毎日きちんと聞けなくても大丈夫
とはいえ、「毎日子どもの隣に座って、最初から最後までじっくり聞きましょう」という話ではありません。
料理をしながら、少し離れたところから聞く日があってもいい。大事なのは、
「聞いてくれている人がいる」
と子どもが感じられることです。そして読み終わったあとに、ひとこと反応を返す。 そのフィードバックが、成長につながっていきます。
第四章 音読から黙読へ

それでもやっぱり、音読を聞き続けるのは大変ですよね。
安心してください。音読には、少しずつ手を離していく時期があります。
| 時期 | 読む力のようす |
|---|---|
| 低学年 | 声に出して読んだり、大人に読んでもらったりすることで、文章を理解しやすい |
| 四年生ごろ | 声に出して読むより、自分の中で読みたい子が増えてくる |
| 五・六年生ごろ | 目で読んで理解する力が、耳で聞いて理解する力に近づいていく |
学年が上がるにつれて、少しずつ自分で黙って読む力が育っていきます。さきほどの髙橋麻衣子さんの研究でも、こうした発達の変化が示されています。
ときどき、こんな心配も聞きます。
「音読ばかりさせていると、黙って読めない子になるのではないか」
でも、髙橋さんの研究によれば、順番は逆です。声に出さないと意味をつかみにくい時期が、先にある。 その時期を通りながら、少しずつ黙って読めるようになっていきます。
音読は、黙読のじゃまをしているわけではありません。黙読にたどりつくための、一つの道のりなのです。
研究結果

最後に、今日わかったことをまとめます。
- 音読は、確かめる活動でもある。 上手に読む練習であると同時に、自分がきちんと読めているか、意味が分かっているかを、自分の声で確かめる活動です。
- 聞いてもらえると、効果が変わる。 ずっとつきっきりで聞く必要はありません。聞いていることを伝えて、終わったあとにひとこと返す。それだけでも、毎日の音読は変わります。
- 音読は、黙読への道のり。 音読が中心の学習はずっと続くものではなく、毎日の積み重ねで、やがて黙って読めるようになっていきます。
だから、読む力がまだ育っている時期には、毎日の音読をていねいに積み重ねることに意味があるのです。
次回は、一年生・二年生の音読に、大人がどう伴走するとよいのかを研究します。
なお、文字を読むこと自体に強い困りごとがありそうなときは、学校の先生や、読みの専門機関に相談してみてください。
参考にした資料
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編』49ページ
- 髙橋麻衣子(2012)「読解能力の発達における読み聞かせの有用性──聴解と読解での理解成績とわかりやすさ評定の比較から──」『読書科学』54巻3-4号、89〜102ページ
- 髙橋麻衣子(2013)「人はなぜ音読をするのか──読み能力の発達における音読の役割──」『教育心理学研究』61巻1号、95〜111ページ
- 井上善弘(2016)「家庭学習としての音読学習──授業での音読学習と家庭学習で使用されている『音読カード』の関連性について──」全国大学国語教育学会『国語科教育研究』大会研究発表要旨集130号、365〜368ページ
- 太田絵梨子(2019)「学習における宿題の役割に関する心理学的検討」『教育実践学研究』20巻2号、27〜39ページ
← 音読のおたすけ