3・4年生の音読の宿題──ミッションで、ゲーム感覚に変える
▶ YouTubeで見る3・4年生の音読の宿題|ゲーム感覚であきさせない!おわか文庫の研究室に、こんな相談が届きました。
「三年生になってから、音読をいやがるようになりました。どう声をかければいいのか分かりません」
前回は、一年生・二年生の音読に、大人がどう伴走するかというお話をしました。
今回は、三年生・四年生の音読について考えていきます。
中学年の音読は、ミッションをつくって、ゲーム感覚で取り組むのがおすすめです。ポイントは三つです。
- 読む前に、今日のミッションを一つ決めること
- そのミッションを、毎日変えること
- ミッションを、大人だけで決めないこと
毎日の音読を、ゲームに変えていきましょう。
第一章 中学年で、音読が「作業」になる理由

この時期には、こんなことがよく起きます。
- 一人で読めるようになって、となりで聞いてもらえなくなる
- 同じお話を、何日も読む
- 上手に読めるようになったのに、ほめられることは減っていく
そのうえ、音読で目指すことも変わります。
| 学年 | 音読で大切にすること(学習指導要領) |
|---|---|
| 一年生・二年生 | 「語のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読すること」 |
| 三年生・四年生 | 「文章全体の構成や内容の大体を意識しながら音読すること」 |
学習指導要領の解説には、文章全体として何が書かれているのかを捉えたり、登場人物の行動や気持ちの変化などを大筋で捉えたりしながら音読することが示されています。
つまり、中学年で大切になるのは、ただ、すらすら読むことではありません。お話を分かって読むことです。
読む力について研究している髙橋麻衣子さんは、読解の指導が最後に目指すのは、黙読で読んで分かるようになることだと述べ、音読から黙読へどう移っていくのか、その道筋を研究しています。
子どもは文章を読むとき、文字を追うことにも、内容を考えることにも、頭を使います。だから、読むことが楽になるほど、お話について考える余裕も生まれてきます。中学年の音読は、ちょうどその途中にあります。
ところが、この道筋は、子どもには見えません。何を目指して読めばいいのか分からないまま、同じお話を何日も声に出す。それでは、音読が「練習」ではなく、ただの「作業」になってしまいます。
第二章 読む前に、今日のミッションを決める

音読カードには、「めあて」を書く欄がよくあります。中学年では、これを今日のミッションと呼びかえます。
読む前に、一つだけ決めます。たとえば、
- 「一回も間違えずに、最後まで読む」
- 「会話のところは、その人になりきって読む」
- 「読んだあとに、どんな話か、一言で言えたら勝ち」
一言は、これくらいで十分です。
「きつねが、いたずらをして、後悔する話」
毎日の一回が、退屈なくり返しではなく、今日の挑戦になります。
大事なのは、これを読む前に決めておくことです。子どもは、読むことと内容を考えることの両方に頭を使います。だから先に、
「今日は、これをやる」
と決めておきます。
第三章 そのミッションを、毎日変える

音読の宿題では、同じお話を何日も読みます。
実は、同じ文章を繰り返して読むことには、ちゃんと意味があります。
アメリカでは、ナショナル・リーディング・パネルという専門家チームが、読む力についてたくさんの研究をまとめています。その中で効果が確かめられた方法の一つが、大人や先生、友達などから助言をもらいながら、同じ文章を繰り返し声に出して読むことです。
こうした読み方では、言葉を正確に読む力だけでなく、すらすら読む力や、内容を理解する力にも効果がありました。読むことにつまずきのない子どもでは、少なくとも四年生まで、はっきりした効果が確かめられています。
つまり、同じお話を何度も読むことそのものが、悪いわけではありません。
だったら、変えるのは、お話ではなく、今日のミッションです。
| 日 | 今日のミッション |
|---|---|
| 一日目 | 間違えずに読む |
| 二日目 | 点のところで、必ず止まる |
| 三日目 | 会話を、その人になりきって読む |
| 四日目 | どんな話だったか、一言で言う |
お話は同じ。でも、今日の挑戦は毎日違う。これなら、昨日と同じ音読にはなりません。
第四章 ミッションを、大人だけで決めない

このミッションを、大人だけで決めないでください。
最初は、二つ出して、選んでもらうだけで十分です。
「点で止まるか、なりきって読むか、どっちにする?」
二つのうちからでも、選んだのは本人です。慣れてきたら、こう聞きます。
「今日のミッション、なににする?」
思いつかない日は、また二つ出せば大丈夫です。音読カードのめあて欄も、本人に書いてもらいます。
読み終わったあとに返す言葉も、一つでいいです。決めたミッションが、できたかどうか。
「今日は、一回も止まらなかったね」
これだけなら、ずっと横に座っていなくても言えます。台所で手を動かしながらで構いません。聞き逃していたら、
「今日のミッション、どうだった?」
と聞きます。できなかった日は、
「じゃあ、明日もう一回やってみる?」
それで、明日のミッションが決まります。
つっかえたところを、その場で全部直す必要はありません。今日のミッションが一つできた。それなら、今日の音読は成功です。
研究結果

最後に、今日わかったことをまとめます。
- 読む前に、今日のミッションを一つ決める。
- そのミッションを、毎日変える。 同じお話でも、毎日ちがう挑戦になります。
- ミッションを、大人だけで決めない。 最初は二つから選んでもらい、少しずつ本人にまかせます。
中学年は、決める役を、少しずつ子どもにわたしていく時期です。自分で決める。自分で読む。そして、できたかどうかを自分で考える。毎日の数分が、少しずつ、自分の力で読むことにつながっていきます。その先には、高学年の黙読があります。
大人がすることは、うまく読ませることではありません。毎日の一回を、今日の挑戦に変えてあげることです。
なお、ここでお話ししたのは、家庭で音読を聞くときの見方です。文字を読むこと自体に強い困りごとがありそうなときは、学校の先生や、読みの専門機関に相談してみてください。
今日のミッション 10のアイデア
同じお話でも、ミッションを変えれば毎日ちがう挑戦になります。読む前に、お子さんと一緒に一つ選んでみてください。
声に出して読むミッション
- 一回も間違えずに、最後まで読む
- 同じところを3回読んで、1回目よりなめらかに読む
- 読むのにかかった時間と、つっかえた回数を記録して、前の日の自分と比べる
- 点と丸のところで、ひと息ついて読む
- 会話のところは、その人になりきって読む
- おうちの人と、1文ずつ交代で読む
お話が分かるミッション
- 読む前に、題名や絵から、どんなお話か予想する
- 読んだあとに、どんなお話だったか一言で言う
- 読んだあとに、おうちの人にお話のクイズを1問出す
- いちばん心に残った場面を、頭の中に思いうかべて、言葉で話す
参考にした資料
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)』第1学年及び第2学年・第3学年及び第4学年〔知識及び技能〕(1)ク
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編』84ページ
- 髙橋麻衣子(2013)「人はなぜ音読をするのか──読み能力の発達における音読の役割──」『教育心理学研究』61巻1号、95〜111ページ
- National Reading Panel (2000). Teaching Children to Read, Chapter 3: Fluency.
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